虹色プライヴェイトflavor

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精神が女児な人の備忘録

ソルベット王国が遺したもの

この記事は「アイカツフレンズ!かがやきのジュエル編」を毎週欠かさず視聴している方々向けの記事です。また前提として、自分はアイカツフレンズ!がめちゃくちゃ好きです。キスイダツカイア。
(友希あいねちゃんが好きです。でも日向エマお姉ちゃんの方がもっと好きです。)
無印スターズ含めてアイカツ!シリーズ全ての話数を視聴した中でも、トップレベルに優れた出来で面白いと思っています。
………今回特筆するソルベット王国編(ep58〜61)を除いて。

皆様、4週に渡って続いたソルベット王国ライフは満喫できたでしょうか。
結論から言わせて頂きますと、この一連の話だけが異様に"面白くなかった"です。
厳密には、57話(Go!Go!ソルベット王国)で旅立つ直前に友希あいねがパスポートを紛失して馬鹿みたいにアタフタしてたのが一番面白かったです。

もっと言えば、この一連の話は果たして本当にアリシア・シャーロットという人間を正しくアイカツを楽しめる未来へ、天翔ひびきと再びフレンズ関係を築いたアイカツで誰かを笑顔にする未来へと押し進めているのかどうか疑問符が浮かぶエピソードだった。
しかもその疑問符が何重もの疑問符になってしまっているためにまるで理解と納得が及ばず、下手すれば”自分がなんでこんなに引っかかっているのか”さえ見失ってしまう可能性が高いため、こうして自分の中で腑に落ちない部分を細分化しまとめることにしました。

ソルベット王国の出来事は概ね4話綴りになっている。そこで各エピソードのおおまかな流れと自分自身の私感を織り交ぜながら振り返ろう。

58話 王女アリシア

ソルベット王国はかつて笑顔にあふれていたらしいものの、頻発するブリザードの影響で外に出ることさえもままならない状況になっていた。フレンズの再結成を頑なに所望する天翔ひびきに対して、ソルベット王国を立て直すために、そして病弱な状態にある実の父親の国王を看病する必要があるため、今はアイカツにうつつを抜かしている場合ではないという意思表示を見せた。そこでピュアパレットを初めとした”よそ者”である御一行が発案したのが、雪や氷で舞台を作ってライブをするというものだった。

作劇上は"雪や氷による舞台でのライブ"ということだったが映像では"いつものライブシーン"なので、せっかく作ったステージを活かしているというカタルシスに欠けてしまう。しかし4話綴りの中でこの程度の違和感はほんの序の口に過ぎないし大人の事情もあるので、大目に見ようと思った。

59話 合言葉はキスイダツカイア!

ソルベット王国の民たちは前回のライブである程度の感銘を受けて、子供達もアイカツに興味を持ち始めたものの「アイカツなんてしたくない」というアリシアの言葉の表層から心中を察して彼女に同調するようにアイカツを避けていく。そこでミライが提案したのは「アイカツという言葉を別の言葉に置き換えて」子供達と交流をするというものだった。 

アリシアの本音はあくまで「国を守らなければいけないのでアイカツをしている場合ではない」というものなのだが、それに対する全体のアンサーが「アイカツで笑顔にすればアリシアも分かってくれる」みたいな期待に落ち着くのは、安直というか、アリシアが何故アイカツを控えるのかという前提を分かっていないというか、事の本質を履き違えていない?
そもそもアリシアだって「かつてアイカツをしていた」立場なので、そんなん釈迦に説法みたいなものだし、筋違いも良いところだと思ってしまう。

尤もそういった心中が正しく伝わらないのは鉄板と言えば鉄板だろうし、国民や一行もその真意をどこまで知ってるのかは定かではないけど、そういったすれ違いをあえて長引かせて面白いと思えるケースは稀だし、こういった会話のドッジボールというかディスコミュニケーションで問題が解決から遠ざかっていくのは視聴者目線というメタ的&個人の主観においても見ていて心地良いものでもない。

あと、彼女の心中を国民が理解していようがいまいが関係なく、結果的にアイドル達が”子供達を騙している”構図になっているのがすこぶる嬉しくない。というか、前者はしょうがないとしてもこっちの方がよっぽど業が深い。
極論アイドルは美しい嘘を付く仕事だと百歩譲っても、アイカツは悪い物だという風潮に真っ向から異を唱えることもせずにまるで逃げ道のように何にも悪びれずに平気で子供を欺くことを容認されるのは、果たしてどうなのか。
(いやまぁ…つい最近も異星の生物にドーナツを10億で売りつけるハッタリかましプリキュアもいたけどあっちは完全コメディだし開き直りだし面白かったし……面白くないから文句を言っているのであって……)

全くの余談だけど、メタルギアライジングにおいても*1「言葉を変えることで実態から目を逸らすのは人間の脳の優れた現実逃避能力」と揶揄されているので、そういう意味で更に残酷なんだよな。

60話 アイカツ!禁止令!?

ソルベット王国の厳しい寒さは国民の笑顔さえも奪っていることにアリシアは王女として責任を感じていた。そして、アリシアの心中を汲もうとしたソルベット王国の騎士団長が「アイカツ禁止令」を発令してしまう。そして、アリシアアイカツを遠ざけた理由の一つとして実の母親である王妃の死を経てその遺志を引き継いだことが判明する。その覚悟の証明として彼女はドレスのカードと天翔ひびきとの写真を入れた宝箱を施錠した鍵を窓から捨ててしまう。

そもそもソルベット王国の士気が下がったのが「寒さのせい」なのか「アリシアが悲しんでいるから」なのか、センシティブになるべきその辺りが綯交ぜになってしまっている感が否めないのは気のせいでしょうか。
また致命的な問題として、たかがよそ者の未成年アイドルなんかじゃ現実問題本当にどうすることもできない事情というか、勝率が僅か1%しかないとかそういうピンチにすら至れない「主要人物が全く介入する余地のない」「物語の中で風穴を開けて打開する余地が全く見受けられない」シチュエーションで物語を進められてもメタ的に八方ふさがりというか、そんなんどうしようもないじゃん………って観ている側も下がる。
「これはアイカツでどうにかなる問題なのか?」という疑念よりも「彼女達のアイカツならきっと何とかなる」という方面に視聴者の気持ちを勝たせる必要があるのに、本当に現実問題八方ふさがりな情報ばかり出される中で、あてずっぽうな考えによるアイカツ禁止令という更なる曲解・ディスコミュニケーションの要素が発生するせいで、そもそも「国の未来を守る為に今はアイカツをしている場合ではない」から始まったはずの話の主眼が迷走するし、(見えなくても面白ければいいけど、見えないせいで面白くないし、)結局どうするのが正解なんだっけ?って観ているこっちが路頭に迷ってしまう。

61話 心の扉をあけて

ソルベット王国を襲うブリザードのせいで、国民だけでなくひびきまでカチコチに凍って動けなくなってしまう!?…という”芝居”をする悪魔的作戦を湊みおが発案し、国民と御一行総出で敢行することでアリシアアイカツを促す。

((……このアイデアを脚本に通した人、大丈夫?))
アリシアが抱く故郷の問題」と「アイカツで周りに影響を与えること」自体がここまでの流れでそんなに噛み合っているようには思えなかったんだけど、それらをリンクする手口としてアリシアを三文芝居で騙すという「善意で誰かを欺くことで話を丸く収めようとする」手段を取るのは、あまりにも無理筋というか強引、傲慢では、って思えてしまった。

たぶんアイカツらしさの一環として、シリアスにさせすぎないように調整弁の役割を果たすコミカル描写として、こういう描写を入れたんだろうし、何かの問題に対して一種の”アイカツらしさ”でオチを作るのもシリーズ的には一つの正解なのかもしれないけど、どこか穿った自分は「架空とはいえ発展途上国の問題を軽く見過ぎじゃない?」「アリシアという子は所詮この程度で動かせる人間に思われてるんだな」って思ってしまったし、安直にこういった選択を取るのは「その問題を取り巻くあらゆるものを舐め腐ってない?」っていう反感を買いかねないので、自分の中でソルベット王国編が強く残してくれたものはおそらくそういう所です。

そして結局、この国の住民は、単純にアイカツがしたいのか、アリシアに元気になって欲しいのか、国を復興させたいのか、今一つはっきりしない上に、最初はアリシアの心中を察してアイカツをやりたがらなかったのにも関わらず、まるで手のひらを返したように、アリシアが抱えこんだ国の深刻な状況下でも国民は呑気にアイカツという娯楽をせがむというちょっと間抜けかつ現金な構図が発生したのが、この一連の物語があんまり面白くない要因の一つだったように思う。
この国の民衆が「アリシア様はこう思っているに違いない!」という思索から、アリシア本人の心情とすれ違って好き勝手やらかしてしまうに至る何かが1~2プッシュぐらいあればもう少し納得できたかもしれないけど、ただただ都合がいい存在になってしまったように見受けられた。

要するに

ソルベット王国編の大まかな流れとしては
1.アリシアは「王国を守らなければいけないので」「今は」アイカツをしている場合ではない
2.「アリシアが悲しむから」と王国の住人達の中で「アイカツをしてはならない」というムードが広がる
3.国民達はアイカツの楽しさを知ったので「アイカツは素晴らしい」とアリシアに言い寄る
4.アリシアアイカツをしてもらうことが国民の士気を高めることが分かる
5.アリシアが国を発っても問題ないことが判明する
(5のせいでそもそも1の理由で悩む必要がなくなるので、アリシアの完全な独り相撲になってしまう)(そもそも国政をシャルルや国王に任せていいのか。王女として担っていたものは簡単に他人に任せられるレベルのものなのか。)


なんだろうけども、上記における大まかな流れの中で何度も「前提」が覆されてしまっているので、
ディスコミュニケーション…)(そういう問題だったっけ?好きな気持ちだけじゃどうにもならないのに好きは大事って返すぐらい筋違いでしょ)(じゃあなんでこの国は沈んでたの?この王国の人達が一番望んでいることは何なの?)(じゃあそもそもなんでアリシアは苦悩してたの?)(なんで?)っていくつもの疑問符が浮かんだし、この流れで晴れて復帰!と言われても(そう…)ってなってしまう。
分からない事が多過ぎる。

ついでに自分が納得する最善の形を妄想すると、「アイカツ自体が国民総生産を上げる等の経済成果を具体的に生み出す」か「国王が超元気になるウルトラミラクルが起きる」かぐらいしかないので、一国の事情という年端もいかないアイドル一人二人の手には負えないものをアイカツの物語に導入するのはやはり過酷だったのではないかという心残りが生まれる。

また、完全な私情でダメ押しをすると、そもそもこんなややこしい事情に対して「アイカツで笑顔にする」文脈ひとつでカチコミすぎなのがすこぶる気に入らないし、ややこしい風呂敷を広げたのならば広げたのと同じぐらいの手間をかけて丁寧に畳んでほしいし、つうか笑顔の押し売りとか遊戯王ARCVかよトラウマほじくり返しやがってふざけんじゃねえぞ、っていう気持ちでいっぱいなので、そういう盤外によるネガティブ印象もないといえば嘘になる。






不思議な事が沢山ある素敵なソルベット王国!!
また行きたいね!!
私は御免だけど!!
早くシャッフルフレンズ2回目やらないかな。*2

*1:生きた子供の脳を無理矢理バラしては戦闘用サイボーグのボディへ移植する為にその脳へ直接VR訓練を施している施設のことを組織がサーバールームと呼んでいる、という事実に対して

*2:55話だけが最悪2期の見所の8割になりかねないレベルで55話が好き